日々のつれづれ

大切なこともそうじゃないことも、ゴッチャマゼ

奇跡を起こした村のはなし

読み終わりました。 

 

私も1円で買いました。(ほぼ送料のみ負担)

こちらで紹介した記事にある、一気に買った本の中の1冊です。

toukofujinomiya.hatenablog.com

気楽な気持ちで買ったんですよね。米原万里さんご推薦で、面白そうでしかもたった1円で、負担は送料のみだったし。

 

読んでいて旧黒川村の村長、故伊藤孝二郎氏の生きざまに感動しました。気楽に読み始めて申し訳ない、という感じです。

振り返って、私はこれほどの情熱を仕事に(それ以外の何かに)懸けて生きているのかと自問したときに、なぜだかやりきれなくて泣きたくなりました。

 

村の8割以上が山岳地帯。かつては冬になると働き盛りの男たちの姿がいっせいに消えた。父親や若い男たちは稲刈りを終えると大都会や温暖な地方に出稼ぎに行ってしまい、春の田植えの時期まで帰ってこなかった。

貧困と豪雪に耐えて細々と米を作っているだけの寒村。

それを伊藤村長、若干31歳の村議だった若者が、12期48年間の在職中に、そのままならただ消えていくだけの辺鄙な村を変えていった。

当選当初は村職員の給与の一部を寄付という形で削減し村予算に回し、ほとんどの村民が貧困のため滞納している村税の回収のために説得をはじめ、その後、人材の育成のために村費を充てて職員を海外に派遣し、すべての事業を国県の補助金を最大限利用して村営化し、1次産業のみならず6次産業まで、すべてが循環し網羅する仕組みを作り上げた。

 

私が幼い頃、冬の間に村の若者や父親が出稼ぎで都会に出る、というのは普通に聞きました。その間、留守を守るのは女子供。雪降ろしの苦労その他は普通にあると聞きます。延々と続く出口のない貧困。子供に家業の跡を継がせずに、都会に出す。村はさらに衰退する。

今はわかりませんが、昔は貧乏な町村はみんなそうだったと思います。(あ、ウチじゃないよ)

 

本の中の黒川村の業績を書くだけなら簡単なんですよね。

でも、「人材育成のために村費を充て」「補助金を最大限に利用し」「すべての事業を村営化」ってのを、実際に実行するとなるとどれほどの労力が必要となるのか。

普通だったら、一番最初の、滞納者の説得だけで人生が終わりそうな気がしますよ・・・。

 

伊藤村長は1日に3時間ほどしか眠らなかったそうです。移動用の公用車の中は一人分のスペース以外は書類の山。

病で職を辞してからも、療養中亡くなる直前まで、黒川村の発展のことを考えていたそうです。

その伊藤村長に、ついていった職員もすごい。

 

八方塞がりな貧困状態を元から変える、というのは、並の努力ではできません。

それを伊藤村長は成し遂げたのです。

 

>「いま中央から聞こえてくるのは、『小さな村なんか、つぶしてしまえ』という声ばかりですよ。われわれの悪戦苦闘は何だったんですか?

伊藤村長の後継となった布川氏の言葉です。

本当にそうだと思う。

 

この本は2005年3月が第一版。

2005年9月に黒川村は中条町と合併して胎内市となりました。 いわゆる平成の大合併の産物ですね。(合併騒ぎはどこの市町村でもあったと思う)

これによって、今の旧黒川村はどうなったんだろう、と気になりました。

 

合併当時の胎内市長選では中条町長と現在の市長が一騎打ちとなり当選、今は3期目として市長職に就いていらっしゃいます。

現在の胎内市のHPには、伊藤氏が手掛けた施設が多数紹介してあります。(あ、今でもあるんだ、とホッとしたところ)

 

これほどの情熱を傾けた事実を、ただの歴史の1ページにしてほしくないな。