『ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた』(Waitress)
アメリカ南部の田舎町でウェイトレスをしているジェナ。彼女はパイ作りの天才で、自分の気持ちを込めたオリジナル・パイが評判だった。しかし、私生活では夫アールの嫉妬深さにより自由のない日々を味わっていた。ジェナは同僚に相談し、家出を決意。順調に家出計画を進行していたが、ジェナの妊娠が発覚する。絶望と困惑したジェナの前に産婦人科医のポマターが現れ・・・
この映画、実は初見でダメだったんです。
いい映画だとは思いました。主人公のジェナ役のケリー・ラッセルは好きな女優さんですし、個性的な名前のパイも美味しそうだし、産婦人科医のポマター先生もなかなか普通に好みだったし、キャラクターも個性的で。最後も希望で終わってて好きで。
たぶん、予算がそんなになかったんでしょうけど、それでこれだけの楽しい映画になるんですから、監督や脚本の力なんでしょう。
でもダメでした。
ジェナ(主人公)とアール(旦那)の(ジェナ側からすると)破綻しきってしまった夫婦生活がもう胸に突き刺さってしまい。
逃げるつもりでコツコツと努力した果ての望まない妊娠(夫婦で生活していますから、十分に可能性がある事態)による逃走計画の崩壊が恐ろしすぎて。
手近な相手(とはいえ、幸運にも優しく思いやりのある相手)との情事で心の安定を図ることはできても、結局、ノンストップで子供は成長するわけで。(まぁ、ジェナは妊娠しているのでこれ以上子供はできないから、そういう意味では心配ないけど)
そして結局、自活するためには、何某のあしながおじさんの遺産がなければ店も持てないという。
結局、未来は金次第か?という絶望。
たまたま金(善意の小切手)を手にしたからよかったものの、その善意(小切手=金)がなかったら、定職のない母親と乳飲み子はどうなるんだろう、と。
田舎町のパイのお店で働く、ジェナ(中央)とベッキー(左:旦那は寝たきり老人、なぜか左右の乳の位置を気にする)、ドーン(右:容姿に自信がなく、絶賛彼氏募集中)。
愚痴りあいながら仲良く働きます 。
産婦人科医のポマター先生とわりないの仲に。
両方とも心に埋められない隙間というか穴があったんでしょう。DV旦那のアールに濡れ落ち葉のように張り付かれているジェナはもちろんとして、たぶん、先生にも。
にしても、この体勢(笑)
ウォーターは氷抜きだの、別皿に取れだの、ジュースは一緒によこせだの、様々と注文を付けるジョー。
忙しいジェナが特に興味もない週の星座の運勢をこれみよがしに読み上げたりして。ジョーはこの店の経営者ですが、こんなんだから他の店員(ベッキーやドーン)に敬遠されるんでしょうけどね。
ジェナを心配しているから構うんでしょうね。素直になればいいのに。
ドーンの結婚式(パイ店にて)。
最初は完璧にドーンのストーカーだったオギー。
でも、何気にドーンに捧げる詩が素敵だったりします(笑)ドーンも最後にはうっとりしてるし。
何事も、お互いに愛があればいいのよね。
結局、しばらくこの映画は(録画はしていましたが、心の中で少し)放置して。
かなり経ってからですが、もしジェナはジョーの遺産ともいえる小切手(金)がなかったとしても、きっと親子二人で笑顔で自活してやっていける、(私も、もしそうだったとしても、がんばってみようと思ったんじゃないか?)というところまで考えて、やっと気持ちの整理がつきました。
きっと貧しくともジェナの得意のパイ作りを生かす道を見つけるか、そうじゃなかったとしても、ウェイトレスじゃなくてもどこか親子で生きていける道を見つけるんじゃないかと思うまで、なかなか気持ちの整理がつかなくて。
あのDVでマザコンな最悪旦那のアールと一緒にこの先暮らしていかなくてはいけない(子供ができたらもう逃れられない蜘蛛の巣のような)運命ですよ。想像しただけで死にそう。
いや、本当に。これはしんどい。
ただ気楽に見てるだけの人とは感じ方はちょっと異なると思います。
結婚する前にちょっと考えろよとか、結婚した後で間違ってるって気づいたらすくにやり直せよとか、そういう次元の問題じゃない。
誰だって1回くらいは間違えるもん!!
これは、すぐそばにある危機、ですよ。
大切なのは、間違えてもやり直せる柔軟さだよね。ということで。
ようやく、私の気持ちの中では整理がつきました。
やり直せばいいんです。たとえジョーの小切手があってもなくっても。(そりゃあった方が楽だし、いいわな)
たとえ先には金の苦労しかないとしても、自分の精神が死んでたらいい子育てはできないよ。うん。
がんばろう。
ほんと、がんばる。
そういう話。(映画の内容じゃないじゃん)