日々のつれづれ

大切なこともそうじゃないことも、ゴッチャマゼ

クロワッサンで朝食を(A Lady in Paris)

「クロワッサンで朝食を」
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▼原題は「パリのエストニア人」というフランス語。(何故クロワッサンになった・・・?)
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邦題のクロワッサンもアレだな、とは思いますが、▼英題には「エストニア」の雰囲気がなくなっています。興行って、そんなもんのかしら(悲)
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【あらすじ】
エストニアで母を看取ったばかりのアンヌに、パリでの家政婦の仕事が舞い込む。悲しみを振り切るように、憧れのパリへ旅立つアンヌ。しかし、彼女を待ち受けていたのは、高級アパルトマンに独りで暮らす、毒舌で気難しい老婦人フリーダだった。フリーダはおいしいクロワッサンの買い方も知らないアンヌを、冷たく追い返そうとする。アンヌを雇ったのは、近くでカフェを経営するステファンで、フリーダは家政婦など求めてはいなかったのだ。だが、遠い昔エストニアから出てきたフリーダはアンヌにかつての自分を重ね、少しずつ心を開いていく。やがてアンヌは、フリーダの孤独な生活の秘密を知るのだが──。
映画「クロワッサンで朝食を」オフィシャルサイト | INTRODUCTION:作品紹介 |

フリーダ役はジャンヌ・モロー。もう、超絶好き。

アンヌ役はエストニアのライネ・マギ。
各サイトには彼女について「ジャンヌ・モローに「彼女は、まさに発見です」と言わしめた逸材だ。」とありますが、その紹介も納得です。

 

後ろにある屏風状の建具や自身が纏うシャネル等の衣類もジャンヌ・モローの私物ですって。すごい。けど、本当にすごいのはそこじゃない。

アンヌに対する、(この男、私のだから。あんたにあげないから。覚えておきなさいよ?)というアピール(笑)
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ステファンも、苦笑。まぁ、そこは「間違ってはいない」しね。

我儘放題な(誰であっても遠慮なしに素で対する)フリーダに、気持ちが疲れ気味のアンヌは、夜になると息抜きのためにパリの街を散歩します。
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ウィンドウ越しに素敵な服を見たり。
でも、そのガラスに映る自分は、モッサリとした田舎者で・・・。

アンヌは、エストニア出身と聞いたフリーダへの最初の朝食に、エストニア風の朝食を作ってみましたが、フリーダは手も付けません。
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「美味しい紅茶とクロワッサンで目が覚めるもの」だと言うフリーダのために、アンヌはとりあえずスーパーで数個入りのクロワッサンの袋を買って、そのクロワッサンを供しますが、このありさま。
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「プラスチックを食べろと?」(日本語訳)
確かに、今までパン屋さんの美味しいクロワッサンと美味しい紅茶で朝を迎えていたのに、いきなりスーパーの萎びた(?)ものを出されても食べる気にはなりませんよね。
そこは、ちょっとわかる。

けど、私が給仕する立場なら「言ってよ!」とも思う。

それでもめげないアンヌは、美味しいパン屋さんを発見して、そこで焼き立てのクロワッサンを買います。
その後の、フリーダの(やるじゃん)の顔が可愛い。

少しずつお互いの心の距離が近くなった気がしますが、それでも、フリーダの頑なな気持ちは変わりません。
アンヌの心づくしが裏目に出て、フリーダが昔の仲間と盛大に衝突した後、アンヌは家政婦を辞めて国に帰ることにします。

フリーダ役のジャンヌ・モローは、こういう、盛大に周りを振り回すくらいの勢いのある我儘(傲慢)な、それでいて時折寂しさが滲んでしまうような役は、もう、役作りなんだか素なんだか、全然わからなくなるくらい魅力的で、個人的に物凄い好きです。

そして、アンヌのここからの一連のシーンも、なかなか好き。
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アンヌの髪の結い方もコートも靴も、パリ仕様。つまり、きちんと手入れをした女らしさが滲みます。(普段とエライ違う)

そのアンヌを、通りすがりの男性が二度見するところも好き。
そして、ステファンとしばらく時間を過ごした後の彼女の微笑も。
アンヌのように凛とした佇まいの女性をしっかり見極められる男性がいる国が羨ましい。(自分のことを棚に上げて言う(笑))

一夜明けた早朝、パリのエッフェル塔を眺めるアンヌ。
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観光客まみれの雑踏の中で見るエッフェル塔とは、やっぱり違う印象ですね。

その後、アンヌはエストニアに戻るつもりが結局戻れず、ステファンのカフェに寄ってみますがステファンは不在で。フリーダの元にもう一度、さようならを言うつもりで寄ってみました。

そこで、彼女を待っていたフリーダ。
フリーダは、自分が愛したステファンとアンヌが一緒になった(「一緒になった」という単語を使うのはちょっと違和感があるけど)のを知っていますが、受け入れています。
この懐の深さは、百戦錬磨の女性ならではなんでしょうね・・・


彼女は、結構、なかなか、アンヌを気に入っているようです。 
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フリーダの元で、ようやく本来の自分を取り戻したかもしれないアンヌ。
アンヌの存在があるおかげで、夫とステファン以外愛せなかったフリーダは、人生に活力を見出せるのかもしれず。
これから二人はどういう関わりを持つのかはわかりませんが、少なくとも前向きな方向に向かう兆しが見えます。

 

映画を観た後で、邦題にある「クロワッサン」で朝食を取りたくなるような、オシャレで気楽な映画ではありませんが、心に残る映画です。