日々のつれづれ

大切なこともそうじゃないことも、ゴッチャマゼ

初冬の美術館巡り(ハンガリーと吉野石膏コレクションとミイラとハプスブルク家とサラ・ベルナール)③

さ。初冬の美術館巡り2日目です。
前回まではこちらをどうぞ。 

toukofujinomiya.hatenablog.com

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今朝はNHKのニュースで青森で30cmの積雪があったそうで。
ほんとかよ、と思ってたら本当でした。
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写真は下の子が送ってくれたやつ。
私が青森に帰るまでには溶けてるとは思うけど、別世界だなぁ。

 

今回の美術館巡りの計画をした際に、1泊の旅行計画だと国立科学博物館は行けないだろうなと思っていましたが、詳しく調べてみると、「ミイラ展」はやっぱり面白そう。 

www.tbs.co.jp

ということで、行ってきました。(2泊にしました)
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ミイラ展は想像通り、素晴らしい切り口での展示でした。
ミイラといえば一般的にエジプトについてメインで語られることが多いですが、それ以外の地域から出土されミイラ(自然・人工含む)についても取り上げていて。

これはペルーで発見されたミイラ。
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梱包模様(顔の刺繍、包む際の刺繍等)で文化(時代・地域)の違いが出るのだそうです。
包んだままの状態でCT撮影すると、体育座りしているミイラが中に居ます。

採食されたオーストリアの骸骨。
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どんな思いで頭蓋骨に美しい柄を書き込んで彩色したんだろうなぁ。

保存状態がいいものだと、皮膚や髪の毛まで残っているのがすごい。私とミイラとの間は長い長い時間で隔てられているのに、「少し前に乾燥したんじゃない?」っていうくらいの近い感じがします。

こちらは日本のミイラ。
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こちらの方は少し珍しく(っていうか、初めて知りました)、江戸時代の本草学者さん。(博物学・薬学)
個人の学術的な完成度を試すために自らミイラになるという、どんだけ研究熱心なんでしょうか!?
結果、ミイラ化に成功してるけど、誰もその製法が分からないし、生前にその苦労を分かち合った人もいないのか・・・と・・。
手の数珠が、気持ちを支えたのは信じる学業への信念なのか、信仰心なのか・・・(やっぱり少し悲しい)

日本のミイラ、といえば、即身仏。
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貫秀寺に安置されている即身仏「弘智法印 宥貞(こうちほういん ゆうてい)」。
民を救うために自ら入定(にゅうじょう)されました。

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私、機会があったら拝観したいとずっと思っていましたが、機会がなく。それがこんな形で拝見できる日が来るとは思っていませんでした。

www.town.asakawa.fukushima.jp

ちょっと自分の気持ちがついてこれなくて・・・。

だって、仏様を参拝しようとずっと思っていたのに、まさかご当人が「展示」されてるなんてなんかちょっと違和感がすごい・・・。
仏様を展示・・・

 

他には、ミイラといえばエジプトという固定観念がありますが、そんなプロフェッショナルなミイラ製造のイメージのエジプトでも、ミイラ造りの技術に関しては時代差があり、特に時代が下ってローマ帝国が絡んでくると、ミイラの造り方(見せ方?)も外見重視(棺が豪華・ミイラ造り技術は大雑把)だったりして、大変興味深いです。

ヨーロッパで発見されるミイラは、遺体の保存等を目指したものではなく、埋葬若しくは放置されていた遺体が環境によって偶然ミイラ化されていたものが多くて(そうじゃないのもありますけど)。
それはエジプト等に見られるような死後の世界を念頭に置いた遺体の保存とは全く違う宗教観と環境とが偶然絡み合って現在見ることができる「ミイラ」ではありますけど、今の時代の私たちが当時の様子を垣間見れる鍵のようで、とても貴重で興味深いものでした。

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迷いに迷って、図録は買わず。
うーーーーん、買った方が良かったかなぁ。
ま、今回はすごい良かったんだけど、パスで。

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可愛いモチーフだったけど、実物にはこの中に人骨があったわけで、ぬいぐるみのモフモフ感を押すのはちょっと違うと思って。(個人的に、カワイイ!感じではなかった)
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ちなみに、この子は可愛かった。

 

ミイラ展を見終わったのはお昼少し前ですが、お昼は食べずに、国立西洋美術館の企画展に行きます。

habsburg2019.jp

今回も観たことありそうなものからないものまで、楽しそうです。
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初っ端に登場の、 「フィリップ端麗公」
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端麗・・・の文字の意味を確認したくなるご尊顔です。(目の下、たるんでない?)

ついスマホで調べてみたのですが、どのサイトでもフィリップ公は美麗・端麗等の称号がある、実際にハンサムさんだったそうです。(この絵を見る限りでは信じられんが)

たまたま、この絵ではそう見えない風貌(個人意見)だっただけで、実際は彼があまりにも美麗で、しかも他に女を作るので、奥方は嫉妬のあまり精神障害になった風でもあるそうです。(嫉妬が原因かそもそもの精神的な弱さが遠因かはわかりませんけど)

なんとまあ。様々なドラマがあるものですね。

 

「オデュッセウスとキルケ」
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オデュッセウスはトロイア戦争後、故郷に戻るまでに物凄い長い旅路を巡りますが、その途中でキルケの島に漂着します。
キルケは魔女で、その魔術によってオデュッセウスの部下たちを動物に変えてしまいました。
絵画では、オデュッセウスが色仕掛けで迫るキルケに「まず部下たちを人間に戻すのが先だ」というシーンなのですが。

どうみてもオデュッセウスの方が篭絡される寸前(笑)
顔は嫌がっても足が絡んでるじゃねーか、おっさん!って感じ。

 

「メルクリウスの警告を受けるヴィーナスとマルス」
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ヴィーナス(アフロディテ)は夫たるウゥルカーヌス(ヘーパイストス)の目を盗んでマルスと浮気をするんですけど。

まぁ、ギリシャ神話って、こんな話ばっかりだわね(^^;)

このシーンは浮気現場をメルクリウスに押さえられて警告されていますけど、当のメルクリウスの咎めにそんな本気な感じがしません。
(あの堅物のウゥルカーヌス(ヘーパイストス)だしなぁ。っていうか、俺だって機会があったら拝みたいよ。)って感じの感想まで想像してしまいます。

おまけに、現場を押さえられたヴィーナス(アフロディテ)はかなり焦ってますけど、もう一方の当事者のマルスのこの未練たらしい顔ったら!
もっと焦れば?と他人事ながら心配してしまいます。

 

「ケンタウロスのエウリュティオンを打ち倒すヘラクレス」アントニオ・スジーニ作
ジャンボローニャの作品に基づく
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ケンタウロスのグニッとのけ反った上半身が印象的なこの像。

(これ、昨日のブダペスト展のアレじゃない?)

▼▼昨日のブダペスト展のアレ
「ヘラクレスとケンタウロス」アントニオ・スジーニ作
ジャンボローニャの原型に基づく
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あぁ、コレコレ。
よっぽどこの主題が好きで得意だったのかなぁ。

 

「天使に王冠を授けられる聖女」
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聖母のドヤ顔が眩し過ぎる。そして、どうしたキリストくん。何がご不満なんだ。

 

「青いドレスの王女マルガリータ・テレサ」
ディエゴ・ベラスケス作
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「緑のドレスの王女マルガリータ・テレサ」
フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ作
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宝石や装身具、手袋、背景、襞に至るまですべて青のドレスのマルガリータ王女と緑のドレスの彼女は同じです。(思わず、スカートの下の襞飾りを数えちゃったよ)
でも圧倒的に違うね。っていうのが、ベラスケス(本物)の凄さかも。全然違う。

上手いだけじゃダメなんだね。緑の王女も凄いのよ、本当は。でも、ベラスケスと比べちゃうと、そうなっちゃうのかも。

フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソは、ベラスケスの娘婿さんで才能のある弟子さんの内の一人だそうで。ベラスケスの引き立てで宮廷画家に任命されて活躍していたそうです。

 

「オーストリア大公フェルディナント・カールの肖像」
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凄いお洒落さんですね。過剰包装って感じ。(褒めてる)

飾りリボンの厚さと存在感。赤の衣装に施された太いのレースの縁かがりが、存在感があるリボンに負けないくらいです。
しかも、ブーツの装飾が、まるで咲き誇る牡丹の花のようです。(しかも、ブーツの先っぽまでつま先が入ってないでしょう(笑))
この衣装に負けないくらい、ウェーブがかかった茶色の長い髪が美しく流れています。

(色々)凄いの一言に尽きます。

 

「キリストの降誕」
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こういう系の絵画では様々な暗示があり、様々解説されたりしますけど、そんな難しいことを取っ払って気になるのは、いつも老人扱いされてるヨセフ父さんと、超絶美形若妻のマリアさんと、新生児だけど妙に訳知り顔だったりするキリストくん。
今回でいえば、新生児キリストくんが(え?この神から与えられた裸体、もう布で隠すの?)って思ってるみたいだ。

 

「女性の肖像」
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どうしましょう。
この女性、強そうで強そうで、誰も敵わない気がします(笑)
しかも、右肩にかけている毛皮の顔部分を鷲掴みです。もしかすると、危険を察知したら、あの毛皮の後ろ側に何か重い武器とかが下がってて、勢いに任せて飛んできそうな感じ。

 

「緑のマントをまとう女性の肖像」
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これもきました、力強いムキムキ感。
この腕!たおやかな女性なら絶対にここに筋なんて入るワケがない。
よく見てみると、金色の巻き毛、つややかな肌、胸は露になっていますが、個人的にどうも男顔って言ってもよくない?
実は男の人なんじゃないかと思ったりして。※解説にはそんなことは書いていません

 

「エジプト避難途上の休息」
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ヤン・ブリューゲル(父)およびハンス・ロッテンハマー作

「堕罪の場面のある楽園の風景」
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ヤン・ブリューゲル(父)作

両方とも、ヤン・ブリューゲルが細かい風景画を描きたかっただけなのでは?と思う。特に下の「堕罪の場面のある楽園の風景」だなんて、禁断の果実を食べそうな二人はメインじゃない(笑)
メインは木々と空とあらゆる動物たちのいる風景だもんね。

 

「騙された花婿」
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ヤン・ステーン作

これね、最初間違って「花嫁」って読んじゃった。だって、花嫁がちょっと泣き気味だったからうっかりしちゃった。でも、騙されているのは花婿の方ね。

初老の花婿は花嫁と共に室室の向かうシーンなのですが、花嫁は純潔ではなく妊娠していて、花婿は騙されてる。
騙されている暗示は、花嫁の前の床にある花が散ってる、花嫁の腹が膨れてる、花婿の帽子の飾りが婚礼の花冠の代わりに藁、入り口にぶら下がっている枝は裏切りを示す「角」が二本ついた枝角、入り口の若い男の指も同じく角を暗示しているように見えます。(それを受ける男は指を唇に当てている(黙ってろ)の意味かな)

そして、中央の青いマントの演奏者(賑やか)は、作者のヤン・ステーンです。

(これ、昨日のブダペスト展で見たカレのじゃない?)
▼▼昨日のブダペスト展で見たカレの、といえば、

「田舎の結婚式」ヤン・ステーン作
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これこれ。一番楽しそうな演奏者がご本人。

 

「皇妃マリア・テレジアの肖像」
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マリア・テレジアといえば、ハプスブルグ家の女帝(「女帝」は比喩)として有名ですが、この絵を見ていると、肝っ玉母さんのイメージを受けます。

実際に、夫である子供は16人(!)産んでいますし(有名なマリー・アントワネットは彼女の下から2番目の子です)。妊娠中も子育て中も、実質的な政務を担っていたので、そういう風に見えるんだと思います。頼れるよ。

「フランス王妃マリー・アントワネットの肖像」
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マリー・ルイーズ・エリザベト・ヴィジェ=ルブラン作

女性が手掛けた絵画です。(あんまりないよね)
きっと、この絵を見たマリア・テレジアは、自分の娘はこの絵のように気品と若々しさを兼ね備えた素晴らしい王妃としてフランス宮廷に受け入れられてると思って、安心したと思います。

 

「神聖ローマ帝国皇妃マリア・ルドヴィカの肖像」
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絵画は自宅(もちろん宮殿か豪邸に限る)のどこか一室の壁に飾るじゃないですか、もし私がどこかの一室で偶然この絵の彼女を見たとしたら、まるで物語の中から飛び出してきた美しい女王(妖精の国の女王とか)なんじゃないかと思うな、と思ったんですよ。

 

もう、やっぱり素敵でした。観に行ってよかった。

国立西洋美術館を出たのは午後1時を過ぎていたので、少し遅めのお昼ご飯にしようと、どこか食べるところ(とりあえず座れるところ)を探していて、老舗(?)の喫茶店に入ってみました。
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あ、老舗だ!

佇まいから音楽まで!(昭和!)
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チーズトーストをいただきました。
シンプルですが、トーストにはちょっと辛子が効いてて、なかなか美味しかったです。

今日は国立科学博物館と国立西洋美術館の2ヶ所だけの予定です。
この後は、実家(下の子のご飯支度をお願いしたし)や職場(2日も休んじゃったし)や友達へのお土産を買って、今日は少し早めに終わります。

 

明日は最終日です。
あっという間だなぁ。

帰るの、イヤだなぁ(笑)

 

▼▼続きはこちら 

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