日々のつれづれ

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寄生虫なき病

「寄生虫なき病」(an epidemic of absence)

まぁねぇ・・・・この書籍の装丁に、下の子には引かれましたが、逆に私は惹かれたわけで(笑)

寄生虫なき病

寄生虫なき病

 

ずっと以前から、私は現代で問題となっているアレルギー系等の疾患の遠因には、環境の中での各種菌類・ウィルス等の過剰なまでの排除があるんじゃないかと考えていました。(そういう考えは一部でずっとありました)
Neisseria gonorrhoeae Bacteria
上下水道は完備され(一部違うけど)、常在菌やウィルスを排除する生活が普通になり、子供たちは外遊びをしなくなり(できなくなり)、生活圏内で様々な種類の虫を見て、捕まえて、飼う生活がなくなり、身近に動物(犬や猫のペットも含めて)がいる環境は遠くなり、病院に行けば抗微生物薬が普通に処方され(もちろん、症状による)る。

特に日本人は、海外(特に東南アジアやアフリカ等の滞在環境に日本でのレベルを軽く超える菌類等が存在する環境)では、生水を一口飲むだけで症状がでる場合があります。(ええ。一般的には下痢です。)

 

そういう、国外と環境が著しく違っているし、同じ国内でも昔と比べて物凄い勢いで人体を取り巻く微生物等の環境が変わってきているのと並行して、昔と比べてアレルギーの子たちが増えているし(実際、花粉症はかかってない人の方が珍しい)、それ以上に自己免疫疾患の人も増えているのを感じています。

もう、化学物質が・食べ物が・育て方が・原因、とかいうレベルではなく、たぶんそれは複合的で、少なくとも、一分野の医学や化学、生物学のグループのみで解明できるような単純な構造ではないのかもしれません。

だからといって、「日本人は清潔すぎて軟弱だから、今すぐ汚物の中で暮らせ」(失礼!)とか「いっそのこと、腹に寄生虫でも飼えば、免疫系は一発でそっちに関心が向くから、それで万事オッケーじゃね?」的な乱暴な発想では、うまくいくとは考えられません。(思ったことがあることは否定しないけど)
Fasciola hepatica x 100mag (2)

 

でも、それを自分でやっちゃうクレイジーな人がいるとは思ってもいませんでした。著者自身は重度のアレルギー疾患と自己免疫疾患を患っています。

その著者の驚きの体験の前に、現代とそれ以前との環境の違いや、地域ごとのアレルギー疾患、自己免疫疾患の罹患率の違い、民族ごとの遺伝子の違い、そして各地域での年代ごとの罹患率の比較など、著者自身が様々な論文を読み込んで言及してくれているので、私のような素人にもわかりやすく読めます。(翻訳がいいのかな)

本書原題の「an epidemic of absence」((寄生虫等の)不在による病の流行)にのフレーズに集約される、以前であれば、人類が好むと好まざるとに関わらず、強制的に関わらざるを得なかったあらゆる寄生虫類・細菌類・ウィルス類の、現代(主に先進諸国)における「不在」が、今私たちの前に様々な「疾患」という形で現れるというのは、本当に興味深いです。

そして実際に寄生虫に感染した人々の「感想」。これはかなり個人差のある「感想」になっています。(寄生虫の品質レベルも違う(そもそも「寄生虫の品質」が確立されていない)中での「感想」です。)

そして実際に著者が寄生虫に感染した際の「感想」。これはあくまでも彼個人に限定されている「感想=個人的な思い」であって、とても一般化できるようなものじゃない。(真似する人はいるだろうけど)

でも、それが、かなりの説得力をもって最後を締めくくっています。

 

興味のある方であれば、一読の価値はあるかと思います。(表紙も可愛いしねー)