日々のつれづれ

大切なこともそうじゃないことも、ゴッチャマゼ

『オフィーリア』(Ophelia)


【あらすじ】
16世紀のデンマーク。貧しい少女オフィーリア(デイジー・リドリー)は偶然から出会ったガートルード妃(ナオミ・ワッツ)に気に入られ侍女として迎え入れられる。年頃を迎えたある日、長い戦争から帰還した王子・ハムレット(ジョージ・マッケイ)禁断の恋に落ちる。しかし、王位継承を狙う弟クローディアス(クライヴ・オーウェン)による王の毒殺疑惑が浮上。そんなこともつゆ知らずガートルード妃はクローディアスと再婚をしてしまう。ショックを隠しきれず日に日に情緒不安定になっていくハムレット。「愛」を確かめたい一心のオフィーリアと、「愛」と「権力」で揺れるハムレットの行方とは―。 (AmazonPrimeより)


冒頭のシーン。

超有名ミレーの「オフィーリア」そのものです。


オフィーリア(デイジー・リドリー)がずいぶん「キチンと」浮かんでいるので、底が浅い沼なのかと思っちゃいました。(それとも腹筋を使ってるか)

実はハムレットって好きじゃないんですよ。

父王が死んで母親が叔父さんと結婚しちゃって、四面楚歌で。
そりゃ親が殺されたら仇を討つのはわかるし、母親に対しても言いたいことは多々あるだろうが、叔父さんの隙を覗うのに狂ったふりをするのって意味わからん。おまけにかえって叔父さんに疑われてるし。
せっかく王子の地位にあるのに、どうせ簒奪者を討つならもっと実際的な手段を講じればどうよ。もうちょっと上手くやってよ。
一番可哀そうなのは、恋人であるはずのハムレットに全く蚊帳の外にされてしまい、狂気の中で死んだオフィーリア。
他の人も最後はほとんど全員死んでるけど、一応何が理由で死んでるのかわかってるからまだマシ。事情を話しても足手まといの短慮浅慮で気弱な子(バカ)だと思われてたわけ?そもそも、ハムレットはその子と恋人だったハズじゃない?
っていうか、主要支配者が全員死んだら国としてはどうなの。

悲劇だからいいんだろうけさ!(って、ここまでオフィーリアに肩入れしてる時点で「ハムレット」は好きなのかもしれない、と気づく)

この映画はオフィーリア視点ということで、原作をかなり変えてるみたい。興味ある。

オフィーリア(主人公・王妃の侍女・平民)

聡明な眼差しが好印象。
他の方のレビューで「いつソードを抜くかハラハラした」というのを見かけました。その感想、私はスター・ウォーズシリーズは見てないのでちょっと羨ましかったな。

ガートルード(先代王妃・現王妃・ハムレットの母親)

王に顧みられず心が寂しい感じ。
ついうっかり旦那の弟の優しさ(裏があるけど)に付け込まれてしまいました。
相手が義弟とか関係なく、そういう心の隙間は誰にでもできるものだと思う。
でも旦那が死んで、遠方の一人息子が帰郷する前に義弟との再婚ってのは、ないわー
自分をモチーフにしたタペストリーを作成し、それを知らなかったハムレットに「この主人公年くってる」と言われて激昂して涙してるシーンも、なんか若さという輝きを失っていく哀しみが滲んでます。(その哀しみにまたしても義弟が入り込むのだけど)

そんなに出てきませんが、オフィーリアの兄レアティーズ。

必要以上にオーラが出てます。

ハムレット王子

誠実そうな見た目ですが、序盤でオフィーリア以外の侍女にも秋波を送っています。まぁ、王子ってそんなもんかもしれない。みんなチヤホヤするしね。

狂ってるシーンがメインなので、隈取で不健康さを強調。(でも本当はフリ)

オフィーリアはこの恋が身分違いで簡単に不幸になってしまうことを承知しているのでハムレットとの恋に慎重ですが、王子様で何一つ失う想定をしたことがないハムレットは自分の好きな気持ちに一直線。
兄レアティーズからもハムレットに注意するようにと忠告されていますが、恋に歯止めは効きません。

ハムレットもオフィーリアも、「狂ったふり」のシーン、メチャ普通の人に見えます。バレてるんじゃない?とハラハラします。(バレてないらしい)

これはオフィーリアの狂いシーン。
宴に歌いながら花を持ってきただけで対外的には「狂ってる」ことになるのか。確かにかなり非常識だとは思うけど。

個人的には、対象者にピッタリな花(花言葉)を選んでいるあたり、狂者ではないのでは・・・?と思ったり。

個人的には、「狂う」ってこんなイメージなんだけど。

【出演:ガラスの仮面 鷹宮紫織さん】

こういうのもちゃんとあった。そのまんま。

脱線してしまいました。

従来のハムレットのプロットを変更しないと今回のストーリーが成り立たないので、それをどう捉えるのかは人それぞれでしょう。

特に、決闘直前のシーンから15分のラストまでの時間はとても好きです。
オフィーリアはハムレットと共に生きるため、彼を連れ出そうとしますが、彼は応じません。「あとで行く」と答えますが、オフィーリアにはそれは実現しないとわかります。

ハムレットはオフィーリアとの愛情より自身の復讐を、オフィーリアは彼との愛情より、彼の子供との未来を選んだのです。

その後、決闘から殺戮が始まります。
主要支配層が軒並み殺されますが、その中にすれ違った愛情が垣間見えて哀しい。
そして殴られて口から迸る血の軌跡も美しい。(と思うのは私だけかも)

趣旨がちょっと違いますが、愛情が次々と踏み潰されていく殺戮のシーンといえば、ゲーム・オブ・スローンズ「キャスタミアの雨」でしょう。

ロブ・スタークの花嫁の腹を何度も串刺し。この後全員皆殺し。(でもあれはどう考えてもロブの失策と思う)
後味悪すぎる。

 

個人的には、この映画ではオフィーリアが目的意識を持って自ら行動しているという点で、大変好感が持てました。
子供との未来を優先すれば、この一択だな、と思います。

でも最初に通常のハムレットを知らないと、ちょっとあれ?って思わないかも。
予備知識はあった方が良いかと思います。